タイトル−エッセイ集
「秋の桜に想う」

 「桜の声」だからって、春たけが僕たちの季節じゃあないのですよ。ほら、コスモスだって「秋桜」って書くでしょ。

 実はですね、以前桜声舎の名の由来について加藤さんが書いてくださったのですが、そのときひとつ書き忘れがあったのですよ。

 「桜」を使うということになった後、もう一つ植物を表す字を入れようかということになり、出てきたのが木偏に色と書く漢字。

 音読みでセイ、もみじという意味を持つ字です。

 しかしこれでは一般の方に「セイ」と読んでもらうことは難しいと判断し、同じ読みの「声」を選択したのです

 つまり桜声舎の「声」には、秋の香が宿っているとでも言いましょうか・・・

 ところで、僕の亡くなった祖母は全く歩くことができませんでした。あるとき、僕が祖母の車椅子を押し海岸へと散歩に行ったとき、祖母は幼きころ、足が自由に動いていたときがあったらしく、海で泳いだ話を聞かせてくれました。

 その時の祖母の顔は妙に若々しく、僕は、確か寺山修司の言葉だったかと思いますが「想像力より高く飛べる鳥はいない・・・」という言葉を、祖母の横顔に見た気がしたのでした。

 それを感じたのは何年も前の秋。

 秋はいろいろなことを考えさせてくれます。

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