代表理事長の加藤さんによると「さくら」がインター・ナショナルであった、との報告がありましたが、現在世界最高のソプラノの一人、エディタ・グルベローヴァが興味深いCDを出していることをご存知でしょうか。
実はこのCDには、世界中の民謡・童謡が、それぞれの国の言葉で歌われ、収録されています。
日本からは、そう、「さくらさくら」が選ばれているのです。
加藤さんの言うとおり、やや発音に難があるといえばありますが、世界の歌姫が「さくらさくら」を演奏するなんて、なんて光栄なことでしょう。
前置きが長くなりましたが、紀尾井ホールで行われた、幽霊シリーズにおける、ドン・ジョヴァンニ抜粋演奏のレポートです。
いつもと勝手が違ったことは、ホールが邦楽専用に作られているということでした。
一般に邦楽のホールは横に広く、奥行きが少ないのです。つまり演技が平面的になる可能性が出てきます。
さらに今回演奏した場面は、僕の演じるドン・ジョヴァンニが地獄に落ちてしまうというシーンだったのですが、普通は舞台に仕込んである穴(奈落と言ったりする)に消えたりするわけです。
しかしこのホールにそんな設備はなく、魂が抜け、横たえるという演技で処理せざるを得ませんでした。
これはお客様に理解していただけたか、少し心配しています。
それにしても、僕が最も愉快に思ったことは、亡霊役(正確には、騎士長の石像が亡霊となってでてきた。)の足を隠すべく、黒い板が無造作に舞台の真中に置いてあること
でした。
そりゃぁ日本の亡霊と言ったら、あんよはないものだけど、だからって隠すこたァないジャン。
結局、最後まで満足な回答は得られぬまま、その黒い板は「どうだっ」と言わんばかりにその存在を誇示しつづけていました。
演奏の話をしますと、それぞれが相手の演技に刺激されつつ、または刺激しつつ、緊張感のある非常に良い舞台だったと思います。
そんな時ってのは、多少音が違ったとしても(たとえ話ですよ、あくまでも)、それらが傷にならないくらいのドラマが成立するんですよ。演じていてゾクゾクします。
今回は、自分で言うのもおかしなものですが、本当に良い舞台だったと思います。師匠との共演、最高っス。
僕も立派に地獄に落ちることができました。
もう復活したけど。
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